親が亡くなった後の手続き・対応が「いちばんしんどい」と感じるわけ
悲しみの中でいきなり始まる「手続きラッシュ」
親や家族を見送ったあと、「こんなに手続きがあるなんて知らなかった」とお話しされる方は本当に多いです。
死亡届や火葬許可の申請にはじまり、健康保険や年金の停止、銀行口座やクレジットカード、公共料金・携帯電話・インターネットの名義変更や解約など、短期間に対応すべき手続きは20種類以上にのぼります。
お仕事や子育てを抱えていると、「平日に役所や銀行へ行く時間が取れない…」という現実もありますよね。
悲しみの中で、こんなにたくさんのことを一気にこなさなければならないのですから、「つらい」と感じて当たり前です。
実際によくある「手続きの困りごと」
- 死亡届の期限をきちんと把握しておらず、火葬や葬儀の日程調整でバタバタしてしまった
- 健康保険や年金の手続きを後回しにしていたら、勤務先や役所から連絡が来て、さらに焦ってしまった
- 葬祭費や未支給年金など、申請すれば受け取れたお金があると後から知って、正直ショックだった
死亡届は原則7日以内、健康保険や年金の停止もなるべく早めの届出が必要で、葬祭費や未支給年金にはそれぞれ申請期限があります。ただ、日常生活の中でそこまで詳しく把握している方は、決して多くありません。
なぜ手続きが負担に？負担と感じた3つのポイント
1. 手続きの種類が多く、窓口もバラバラ
死亡届は市区町村役場、年金は年金事務所や共済組合、健康保険は勤務先や健康保険組合、銀行や証券は各金融機関、電気・ガス・水道・携帯電話・インターネットはそれぞれ別の窓口と、行く場所がバラバラです。
ひとつひとつの手続きはそれほど難しくなくても、「どこへ・いつまでに・何を持って行けばいいのか」を整理するだけで、かなりのエネルギーが必要になります。
2. 「申請しないともらえないお金」が意外と多い
日本の制度では、未支給年金、葬祭費、埋葬料、遺族年金などは、自ら申請しないと受け取れません。「そもそも制度があることを知らなかった」「気づいたときには申請期限を過ぎていた」というお話も、残念ながら少なくありません。
「知らなかった」だけで、本来受け取れたはずのお金を逃してしまう…これが、精神的なダメージにもつながります。
3. 悲しみと日常が重なり、「考える余裕」がなくなる
葬儀や親せきへの対応、職場への報告・出勤などの調整、家事や子育て…と、手続き以外にも、やらなければならないことが山ほどあります。そんな中で、「期限」「必要書類」「窓口」を一つひとつ確認していくのは、心身ともに大きな負担になります。
今すぐでできる、現実的な対処法
1. まずは「やることリスト」を1枚に書き出す
最初から完璧を目指す必要はありませんが、いちばん大事なのは、「やることの全体像を見える化すること」です。
- 市区町村のホームページなどにある「死亡後の手続き一覧表」をプリント
- 自分のケースで必要なものにチェックを入れる
- 手続きごとに、期限・窓口・必要書類をメモしておく
紙またはスマホのメモ機能を使って「やるべきこと」をまとめておくだけで、「頭の中がごちゃごちゃして動けない」という状態を回避しやすくなります。
2. 期限の短いものと、あとからでも良いものを分ける
すべてを一度に片づけるのは、どんな方でも難しいです。そこで、ざっくりとこんなイメージで分けてみてください。
- 【最優先】数日〜2週間以内に必要なもの
- 死亡届・火葬（埋葬）許可申請
- 健康保険の資格喪失届・勤務先への連絡
- 【早めに着手したいもの】数週間〜数か月以内が目安のもの
- 年金の停止・未支給年金の請求
- 葬祭費・埋葬料・遺族年金などの各種給付金の申請
- 【落ち着いてから取り組むもの】しばらく時間をかけてよいもの
- 相続手続き・不動産の名義変更・遺品整理など
このように「今はここまででいい」と線を引いてあげることで、自分を追い込みすぎずに進めやすくなります。
3. 役所の窓口や専門家に「一覧を教えてもらう」
インターネットで調べても不安が残るときは、思い切って役所の窓口に相談してみるのも一つの方法です。
- 市区町村役場の戸籍・住民票・保険年金などの窓口で、「親が亡くなったあとの手続きについて教えてほしい」と伝える
- 必要な手続きの一覧や案内パンフレットがあればもらう
- もらった資料を、自宅での「やることリスト」として活用する
最近では、おくやみ窓口を設ける自治体も増え、死亡に伴う手続きの全体像を一度で教えてもらえる場が、少しずつ整ってきています。
ただし、役所では相続・遺品整理・不動産の実務までは対応していないため、紹介された業者に依頼する際は、口コミや実績などをよく確認する必要があります。そのため、場合によっては終活を専門にしたプロフェッショナルに直接相談する方法も検討すると安心です。
4. 一人で抱え込まず、「伴走してくれる人」を決めておく
手続きのつらさは、「全部自分だけでやらなければ」と感じてしまうところから、さらに大きくなります。
- 家族の中で、「役所関係」「金融機関関係」など、ざっくり担当を決める
- 信頼できる友人や親族に、「一緒に行ってくれるだけで助かる」と正直にお願いしてみる
- 司法書士・行政書士・社会保険労務士など、専門家の相談を活用する
「誰かと一緒に進めている」だけで、心の負担はかなり軽くなります。無理に一人で背負い込まなくて大丈夫です。
「手続きの負担」を減らす、生前にできる小さな準備
「親が元気なうちに、こんな話をしていいのかな…」と迷うお気持ちも、とてもよく分かります。それでも、少しだけ勇気を出して準備しておくことで、将来の自分と家族を本当に助けることができます。
1. 書類の「場所」だけでも共有しておく
- 健康保険証・年金手帳・通帳・キャッシュカード・マイナンバーカード
- 生命保険や火災保険の証券、固定資産税の通知書など
「どこに何があるか」だけでも共有しておくと、いざというときに探し回る時間とストレスをぐっと減らせます。
2. かんたんな「手続きメモ」を一緒に作っておく
- 「亡くなったら、まずここに連絡してほしい」
- 「この銀行に口座がある」「この保険に入っている」
- 「この書類は、この棚（引き出し）に入れてある」
立派なエンディングノートでなくても、ノート1冊やA4用紙1枚にメモしておくだけで、あとからの安心感がまったく違ってきます。
まとめ：手続きは「完璧」よりも「見える化」と「分けて進める」が大事
親や家族が亡くなったあと、たくさんの手続きと期限に追われてしまうのは、とても自然なことです。だからこそ自分を責める必要はまったくありません。
- すべてを一度に完璧にこなそうとしない
- まず「やること」を1枚に書き出し、期限の短いものから少しずつ進める
- 役所や専門窓口で一覧を教えてもらう
- 家族や身近な人、専門家と「分担」して進める
そして、少し心と時間に余裕があるときに、親御さんと書類の場所や手続きのことを軽く話しておくことで、将来の自分や家族の負担をぐっと減らすことができます。
家族が集まるタイミングを利用し、「もしものとき、手続きで困らないように、ちょっとだけ教えておいてもらえる？」 そんな一言から、静かに、でも確実に、「困らない未来」がスタートしていきます。
